ザイゴマティック・ボーンといって、サイナスを横切り、頬骨の眼球の脇にある骨にインプラント体を埋入する方法もあります。この骨も蝶形骨同様硬いので、しっかりインプラントを埋入することが可能です。上顎の骨が著しく消失している患者さんに対しては、眼球の脇の頬骨にインプラントを2本埋入して仕上げるザイゴマティック・インプラント治療を実施することが多いです。
これについては名古屋大学の上田実教授が、ザイゴマティック・インプラントの適用症例について書いた論文があり、局部欠損にもその有効性が実証されています。
手術は口腔内で行うためにまったく傷跡は残りません。レントゲンを撮ると頬のあたりを斜めに横切るインプラント体があるのがわかりますが、外から歯を見ただけではまったくわからず、美しく仕上がります。このように、サイナスリフトを使わずに、ザイゴマティック・インプラントだけで治療を行うことも可能です。
これらの治療のいいところは仮に5ミリ程度の骨が残っている場合は、頬骨にインプラントを埋入したあとすぐに歯を装填することもできることです。頬骨のインプラントは噛む圧力に対しても強いので、奥歯に対して使ってもイミーディエートローディング(その日に歯を取り付け噛むこと)ができます。
ザイゴマティック・インプラントの成功率は97.1パーセントと、現在のところかなりいい結果を残しています。高い治療技術が要求されるだけでなく、使い方が難しいです。しかし、インプラントを諦めていた症例にも使える技術です。