下顎の神経を移動させてインプラント体を埋入する2

まずおとがい孔を通るおとがい神経周囲とその後方の下顎管を通過する下歯槽神経の通る外側の骨を切り取り、神経や血管をいったん外に出します。

これらを骨の外側に出したところでインプラント体を埋め込み、埋入が完了したところで、元の場所に神経などを戻すことで完成します。神経や血管を傷つけることなく、インプラントを埋入できます。

まれに麻痺が出るケースがありますが、時間が経てばある程度慣れてきます。この知覚麻痺は10人に1人の割合で起こります。難しい技術ですが、これを事前に行っておけば、骨を再生することなくインプラント体を埋入することが可能です。

技術は必要ですが、この方法を使うことで骨が吸収されている人でも、新たに骨を再生することなくインプラント埋入が可能になります。

下顎の神経を移動させてインプラント体を埋入する1

インプラントが成功する条件として、患者さんの骨がしっかりしているという項目があります。

だからこそ、今までは骨がしっかりある人を対象に、インプラント治療が行われてきました。しかし本当に困っているのは、歯周病で骨まで溶けて吸収されて歯がグラグラしている方や、長い間入れ歯を使っていたために、生理的咬合圧がかからず骨が吸収されてしまっている方です。つまり、歯と骨のなくなってしまった人こそ切実にインプラントを必要としているのです。

上顎に比べて比較的硬くて大きい骨である下顎については、骨の吸収があったとしてもインプラント埋入が可能なケースが多いです。骨はある程度の高さと厚みがないとインプラント体を骨にしっかり固定することができません。しかし、下顎に限っては骨の高さが足りなくても長さ7ミリのインプラント体を埋入することで、しっかりと固定することが可能です。

下顎に、インプラント体を埋入する場合に、障害となるのが臼歯部の骨が著しくなくなっているケースです。ここには、おとがい孔と下顎管があり神経が通っています。この神経は下唇の知覚を司っており、インプラント体を無理に深く埋入すると神経の束を傷つけます。

例えば、下顎臼歯部(奥歯)で下歯槽神経(下顎管)までの骨の高さが6ミリもない場合は、インプラントを埋入する前に、神経を一時的に引っ張り出して移動させます。この治療を「下顎神経移動術」といいます。

完全に吸収された上顎の骨を再生する3

骨がないケースに関しては、どの治療をどのように組み合わせて骨を効果的に増やすか、または周囲のどの骨をインプラント体の維持に利用するか、計画を立てて行うことが大切です。

骨の再生技術はすべて手作りが基本です。インプラント体に取り付ける歯(上部構造)は、綿密な計画により、咬合圧を分散し、オーバーローディングしないように作ります。

こうした多くの技術は、歯周病で歯を失ったばかりか、骨がほとんど吸収されてしまい、入れ歯もインプラント治療を使うことが提唱されるようになったのは、1990年頃からで、現在では学会の常識となっています。

歯を取り戻すということは、そもそも骨を取り戻すのと同じことです。美しい歯は、技術の高いラボで作られた歯をつけることで完成します。しかし、その下にはしっかりとした骨があり、その骨があるところにインプラント体を埋めてこそ美しさが際立ちます。

インプラント治療は、見た目のよさを支える補綴(歯の装填)の技術とラボの技術、骨を作る再生技術などの総合力が求められるものなのです。

完全に吸収された上顎の骨を再生する3

骨がないケースに関しては、どの治療をどのように組み合わせて骨を効果的に増やすか、または周囲のどの骨をインプラント体の維持に利用するか、計画を立てて行うことが大切です。

骨の再生技術はすべて手作りが基本です。インプラント体に取り付ける歯(上部構造)は、綿密な計画により、咬合圧を分散し、オーバーローディングしないように作ります。

こうした多くの技術は、歯周病で歯を失ったばかりか、骨がほとんど吸収されてしまい、入れ歯もインプラント治療を使うことが提唱されるようになったのは、1990年頃からで、現在では学会の常識となっています。

歯を取り戻すということは、そもそも骨を取り戻すのと同じことです。美しい歯は、技術の高いラボで作られた歯をつけることで完成します。しかし、その下にはしっかりとした骨があり、その骨があるところにインプラント体を埋めてこそ美しさが際立ちます。

インプラント治療は、見た目のよさを支える補綴(歯の装填)の技術とラボの技術、骨を作る再生技術などの総合力が求められるものなのです。

完全に吸収された上顎の骨を再生する2

上顎の前歯のかろうじて残っている骨に、切り取ったばかりの骨を被せるように置き、チタンのピンでしっかり固定して、周囲をメンブレン(人工の膜)で覆って骨を作ります。

貼り付ける骨には小さな穴を空けておき、血液が通ることで骨を再生しやすくなります。5、6ヶ月後、骨の厚みと高さが確保できるようになったらインプラント体を埋入します。

上顎の奥歯の骨がない場合はサイナスリフトや、ザイゴマティック・インプラントを使います。
第二小臼歯のところから頬骨に向かって両側にザイゴマティック・インプラントを埋入します。両側の側切歯または犬歯部に通常のインプラントを2本埋入し、計4本のインプラントを埋入し上部構造を支えます。頬骨はしっかりしており、上部の歯を装填しても大丈夫なのでいきなり入れて噛めるイミーディエートローディングも可能です。

ザイゴマティック・インプラントはローディング(咬合圧)に強いのでこれが可能になります。ザイゴマティック・インプラントは4本のみで歯を装填するのは、ザイゴマの利点をよく活かせる方法です。特に骨の大きい男性に向いている治療です。

こうした一連の手術は難しい治療で、かなりの技術を必要とします。さらに、インプラントは、咬合圧との戦いです。噛むときの状態がよくなかったり、過重がかかるオーバーローディングの場合には、骨が溶けていきます。それをフォローするためには、患者それぞれの骨の状態を見ながら、咬合調整が必要です。

完全に吸収された上顎の骨を再生する1

上顎の骨が完全に吸収されてなくなっている症例も多いです。従来は骨がないケースでは総義歯にしていましたが、それではますます骨の吸収が進むのが問題でした。

原因の大半は歯周病です。歯周病になっても、できれば歯は抜きたくないと考える患者さんが多いです。医者も患者の希望に沿いたいと、何とか最後まで歯を残そうと努力します。

しかし歯周病の感染が進めば当然のように骨が溶けて吸収されます。歯はかろうじて最後まで残ったかもしれませんが、骨が全部なくなっているということもよくあります。

骨がすべて吸収されてなくなってしまってからでは、今までは治療の方法がありませんでした。 

上顎に骨がまったくなく、サイナスが大きく広がるばかりで、鼻のところまで骨がなくなっていることもあります。こういうケースではインプラントはできませんし、総義歯で我慢しながら、本当に不自由な生活に耐えなければなりません。

ところが、今はこうしたケースに対してもインプラント治療が可能になっています。考え方としては、上顎の前の骨の厚みを増やすために骨を再生します。つまり、なくなってしまった骨を再生することで、ふたたび使えるようにしようという技術です。

下顎骨(レイマス)から縦1センチ、横4センチ程度の骨を切り取ります。もちろん、口の内側から切るので、外には傷口が見えません。

歯槽骨の代わりに頬骨を使う治療2

ザイゴマティック・ボーンといって、サイナスを横切り、頬骨の眼球の脇にある骨にインプラント体を埋入する方法もあります。この骨も蝶形骨同様硬いので、しっかりインプラントを埋入することが可能です。上顎の骨が著しく消失している患者さんに対しては、眼球の脇の頬骨にインプラントを2本埋入して仕上げるザイゴマティック・インプラント治療を実施することが多いです。

これについては名古屋大学の上田実教授が、ザイゴマティック・インプラントの適用症例について書いた論文があり、局部欠損にもその有効性が実証されています。

手術は口腔内で行うためにまったく傷跡は残りません。レントゲンを撮ると頬のあたりを斜めに横切るインプラント体があるのがわかりますが、外から歯を見ただけではまったくわからず、美しく仕上がります。このように、サイナスリフトを使わずに、ザイゴマティック・インプラントだけで治療を行うことも可能です。

これらの治療のいいところは仮に5ミリ程度の骨が残っている場合は、頬骨にインプラントを埋入したあとすぐに歯を装填することもできることです。頬骨のインプラントは噛む圧力に対しても強いので、奥歯に対して使ってもイミーディエートローディング(その日に歯を取り付け噛むこと)ができます。

ザイゴマティック・インプラントの成功率は97.1パーセントと、現在のところかなりいい結果を残しています。高い治療技術が要求されるだけでなく、使い方が難しいです。しかし、インプラントを諦めていた症例にも使える技術です。

歯槽骨の代わりに頬骨を使う治療1

上顎の骨が少なくなっている症例はかなり多いので、骨を作るのではなく、確実にインプラントを埋入できる方法も開発されています。

頬骨や、蝶形骨(ちょうけいこつ)などに長いインプラント体を斜めに埋入して、しっかり固定する技術です。

頭蓋骨をみると、サイナスの隣に鼻腔があり、そこには硬い骨があります。また、奥のほうは上顎結節や蝶形骨という骨があります。

ここに、長いインプラント体を埋入してその上に歯を装填しても耐えられます。そこで、これらの骨に向けて斜めに長いインプラント体を埋入します。

特に上顎結節の奥のほうにある蝶形骨の翼状突起という骨で、ここに斜めにインプラント体を埋入、ブリッジを支台として使用するという方法が有用です。

上顎の骨がない場合のサイナスリフト法2

上顎の骨は下顎に比べて軟らかくて薄く骨が少ないので、サイナスを元の位置まで引き上げてそこに骨を作り、骨の厚みを確保するという治療がサイナスリフトです。サイナスは上顎粘膜で骨と接触しているので、最初にこれを剥がし、引っ張り上げます。

これによってできた空間に、患者の下顎や腰から一部切除した骨を砕いたものを充填したり、あるいは骨補填剤を混ぜたり、骨補填剤のみを充填して骨を作ります。そこをメンブレンで多い、移植した骨や骨補填剤によって骨ができるのを待ちます。

この他にサイナスリフトは挙上して、そこに膜を取りつけて作り出された空隙を維持することによって、何も充填しないで骨を作る方法もあります。

骨ができるのを待ってインプラント体を埋入する方法と、移植と同時に埋入する方法があります。インプラント体が、サイナスとの間に空間を作る傘の骨のような働きをすることで、そこを骨で満たすという考え方で開発された方法です。

以上が上顎臼歯部の骨が少ない場合の骨の再生の基本的な方法です。

サイナスリフトで骨を作り、長期使用するケースの成功率は90パーセント程度です。もちろん、まったく骨がないケースでは、まずサイナスリフトである程度骨をつけてから治療せざるを得ません。

上顎の骨がない場合のサイナスリフト法1

上顎の場合は、骨が柔らかく薄いので、どうしても骨を増やす何らかの外科的な処置が必要なケースが多いです。

骨を増やす方法はボーングラフト、メンブレンで骨を作る方法、ディストラクションなど様々開発されていますが、上顎臼歯部(奥歯)で比較的よく行われるのは、サイナスリフトという方法です。

特に難しいのは、上顎の臼歯部の骨がない場合です。上顎には上顎洞(サイナス)があります。サイナスは、上顎の歯槽骨の上部にある大きな空洞で、それが鼻腔へとつながっています。頬のあたりを触ってみると、頬骨の下あたりにくぼみが感じられる場所がありますが、それがサイナスです。

歯を抜くと骨が頬側(きょうそく)から吸収されます。つまりサイナスは外側から内側に向けて吸収するだけでなく、含気圧といって息を吐くときに呼気の圧力がかかります。

この鼻から抜ける空気の圧力のためにサイナスが大きくなります。歯を抜くと骨が吸収されるだけでなく、内側から押されるのでますます骨の高さがなくなり、インプラントは埋入できなくなります。

このサイナスの下底を再度引き上げることで、インプラント体の埋入場所を確保しなければなりません。