持病があるのですがインプラントはできますか?

外科的処置を伴うインプラント治療では、持病でトラブルを起こさないために、事前診査を行います。特に高血圧や心疾患、糖尿病、肝臓病、腎臓病などの慢性疾患をお持ちの方は注意が必要ですが、継続的な治療を受けており、良好な状態が保たれていればインプラントの手術は行うことができます。

ただし、重度の心臓病や糖尿病等がある場合は主治医の判断を仰がなければならないことがあります。出血時に問題を起こさないためにも、まず主治医に相談することをおすすめします。
病気とは関係がありませんが、妊娠されている方でもインプラント治療には問題ありません。ただ、つわりの時期や安定期に入る前、そして出産と重ならないようにタイミングを考慮する必要があります。できれば出産が済んで落ち着いてからインプラント治療を受けるのがベストです。

18歳以上なら、ほとんどのケースでインプラント治療は受けられます。ただし治療を成功させるためには、手術の際に出血が止まらないなどの原因となる全身疾患をもっていないことが条件となります。健康体が一番ですが、きちんとコントロールできていれば問題ないでしょう。
感染源となるむし歯や歯周病の治療を済ませ、口腔内の衛生が保たれていることも大事です。またインプラントの土台(フィクスチャー)はあごの骨に埋めるので、埋める部分の骨の厚みや高さが最低でも1~1.5センチ以上であることが条件です。骨が薄い方やもろい場合はそのままでは手術ができません。先に増骨術などで骨を増やす処置を施してから、治療を進めることになります。

まったく歯が残っていなくても、インプラント埋入できますか?

まったく歯のない無歯顎の場合でも、インプラントを埋入することは可能です。
この場合、複数のインプラントを埋入し、それを土台にしたブリッジ(ボーン・アンカード・ブリッジ)を装着するという方法があります。
またオーバーデンチャーという方法を使うと、インプラントの本数を極力少なくすることができます。これは4~6本のインプラントによって義歯を支えるものです。ご自身で着脱可能なものと、担当医にしか外せないものがありますが、どちらもあごの骨にしっかりと固定されます。総入れ歯のように外れたり、ゆるんだりして食事や会話で困ることもなく、安心して使用できるタイプです。
インプラントは歯を失っているさまざまなケースに対応できるよう、種類や手術法などが多様にあるので、あきらめる前にぜひ主治医に相談してください。
たとえば前歯や臼歯を1本失っている場合、また複数の歯を失っている場合、上あごか下あごがすべて、あるいは両方のあごすべての歯を失った無歯顎の場合など、状態に応じてインプラントの種類や手術法が選択されます。
難易度の高さは本数にもよりますが、前歯など目立つ部分、そして骨の状態がよくない場合は慎重に治療しなければなりません。骨の量が足りない例はよくみられますが、骨移植や骨補填材などで骨の状態を整えてから治療を進めることができます。

歯周病の治療中でもインプラントは可能でしょうか?

インプラント治療を受けるには、事前に感染源となるむし歯や歯周病を直しておくことが絶対条件となります。特に歯周病は歯周組織に炎症を起こしてあごの骨を溶かしてしまう病気です。放っておくとどんどん骨量が減り、骨がうすくなってインプラント治療に適さなくなります。
そればかりか、歯周病を治さずにインプラントを埋入すると、歯周病とよく似た症状のインプラント周囲炎を起こし、インプラントを早くダメにしてしまいます。そうならないためにも、歯周病はきちんと治すことが大事です。
歯周病の治療は難しくありません。まず歯科医院で奥に入り込んだ歯石を除去してもらい、その後は正しいブラッシングの指導を受けてプラークコントロールをしていきます。自分できちんとコントロールしていけば、ぶよぶよした歯肉でも数週間で健康的に引き締まります。
口腔環境を整えてからであれば、インプラント治療は行えます。歯周病で歯を失ったところにインプラントを埋入したからといって、歯周病になるということはありません。また、インプラント埋入後も、定期検診を継続的に受けて口腔ケアを心がけ、歯周病が再発しないように気をつけましょう。

術前、術後の注意点はありますか?

インプラント外科手術を伴いますから、患者さんは多かれ少なかれ緊張を強いられるものです。できれば手術まではあまり精神力や体力を消耗しないよう、時間に余裕をもっておく方がいいでしょう。もちろん遅刻やキャンセルは避けてください。
手術時には出血もありますし、動きやすいゆったりした服装がおすすめです。また衛生面で女性はなるべく化粧を落として行ってください。食事はきちんと取ったあと、丁寧にブラッシングしてください。
手術の際は全身麻酔でない限り、意識がありますが、無痛処置を施しますから、痛みは感じません。しかし神経質な方、恐がりの方などは手術中に患部に意識を集中してしまい、緊張を高めがちになります。なるべくほかの事を考え、リラックスして臨むことです。
術後は血の巡りが良くなりすぎると、止血の妨げになります。お風呂やお酒、スポーツは避けてください。ただしシャワーぐらいなら大丈夫です。食事は食べやすいものを選ぶとよいでしょう。

治療が終わるまで歯は抜けたままの状態ですか?

インプラントの土台であるフィクスチャー(人工歯根)をあごの骨に埋めたあと、安定するのを待ってからでないと正式な人工歯は入れられませんが、それまではプラスチック製の仮歯を装着することになりますから、見た目の心配はありません。また入れ歯を使用していた場合には、裏打ちした入れ歯を使うことが可能です。
欠損歯が少ない場合は、隣の歯に固定することで当日に仮歯の装着ができます。インプラントの本数が多い場合は、歯が数本連結したブリッジや入れ歯を装着します。仮歯は強度が弱いため、乱暴にすると破損することもあります。通常通りに食事をしてかまいませんが、硬いものや歯に負担がかかるようなものはできるだけ避けた方が良いでしょう。

治療終了後まで何回ほど通院することになりますか?

治療方法によっても異なりますが、一般的なケースとして、検査などで手術前に2~3回通院し、インプラントの埋入手術(一次手術)後、傷口の洗浄などで2~3回、さらに人口歯を取り付けるアバットメント(支台部)の連結(2次手術)、印象採取(歯列の型取り)、人工歯の装着、かみ合わせの調整などで最低でも6~8回の通院が必要です。
さらにむし歯や歯周病があれば、その治療での通院や骨の量が少ない場合には骨造成の治療も加わる場合もあり、それだけ通院回数は増えます。ただ、インプラントを埋入した後、骨と結合してしっかり固定するまでの数ヶ月間は、自分なりに経過観察は必要ですが、問題がなければ通院の必要はありません。

治療期間はどのぐらいかかりますか?

インプラントの治療期間は、手術法によっても異なりますが、インプラント体を埋めたあと骨に結合し、インプラントと一体化するまでの時間を要します。骨と結合する期間は個人差もありますが、下あごで約2~3ヶ月、上あごで約3~6ヶ月ほどかかります。また歯周病やむし歯がある方は、事前にその治療期間が必要となりますし、あごの骨の量が少ない場合には骨を増やす治療をしなければなりません。
そのため治療期間はケースバイケースとなります。目安としては最短で数ヶ月、長い場合は1年以上に及ぶこともあるといえます。
ただ、最近は治療期間を短くする方法がいろいろと考えられています。抜歯即時埋入法や即時荷重インプラントであるオール・オン・4などがそれで、すべての方がこれらの治療を受けられるとは限りませんが、条件さえ満たせば可能となり、治療期間が短縮できます。
インプラントの表面性状に工夫を施すことで、骨と結合しやすいようにするなど素材の工夫によって治療期間の短縮化も図られています。

治療は何歳ぐらいから受けられますか?また高齢者でも可能ですか?

骨格の成長が終わっていることが条件ですので、通常は16~18歳以上であれば、インプラント治療を受けられます。手根骨のレントゲン検査を行うことで、骨の成長状態を確認できます。また高齢の方であっても、健康で骨の状態がよければ、年齢に関係なく受けられます。基本的に年齢の上限はありませんが、あごの骨が薄すぎる場合やもろい方の場合は、骨を増やす処置を行うことでインプラント治療が可能になります。
また最近、インプラントは高価すぎて手が出ないが、義歯がぐらぐらする、噛めないといった悩みを持つ方向けにミニインプラントというものも出てきました。これは通常のインプラントよりも小さい無歯顎用のインプラントで、入れ歯の土台にするタイプです。前歯の部分に4本埋入して、そこに総入れ歯を固定します。
通常の入れ歯より格段に噛む力が増し、手術も簡単でほとんど痛みもありません。歯茎の切開もなく、その日のうちからしっかり噛めます。また入れ歯は取り外して清掃できます。身体への負担も少ないので、体力に自信のない高齢の方にもおすすめです。

インプラントの手術は安全にできますか?

インプラントの手術では痛みを感じなくする局部麻酔を使用します。そして緊張感や恐怖心を感じやすく精神的負担が大きい方には静脈内鎮静法という麻酔を採用します。クリニックによっては鼻マスクで笑気ガスを吸わせて気分を楽にする「笑気吸入鎮静法」を使用するところもあります。
どのクリニックでも麻酔には細心の注意を払っており、局部麻酔は担当医が、その他の静脈内鎮静法などは専門の麻酔医が呼吸や循環器系をしっかり管理して行います。脳波を調べる機械(BISモニター)や、コンピューター制御で薬の量を調整する自動点滴麻酔注入器(TCI)などを導入している医院もあります。

口のなかの手術ですから、患者さんの肉体的、精神的負担は十分考慮されます。インプラント治療が始まってすでに半世紀近くが過ぎている今、手術自体の安全面には高い評価がなされています。あごの骨について精密な検査が行われるようになり、CTによって3次元的に骨の状態を把握することも可能です。これらの検査結果から正確な診断と綿密な治療計画が立てられます。また、コンピューターによって手術のシミュレーションもできるため、手術の精度はより高くなりました。
また特に衛生面でのシステムもしっかり整えられています。麻酔の管理はもちろんですが、院内感染、術後の感染にも配慮します。院内は完全な滅菌対策が施されていますが、もっとも大事なのは術後の患者さん自身の衛生管理です。感染防止の投薬予防、食後と就寝前の消毒、丁寧なブラッシングなどと定期検診がインプラントの寿命に大きく影響します。

あごの骨に金属を埋め込んでも身体に害はないのですか?

インプラントの素材には、金属の中で唯一、生体への親和性(結合しやすい)が高いため拒絶反応も起きず、腐食もしないチタンを使用します。チタンは人工関節や心臓のペースメーカーなど、長期間にわたり体内に埋め込む医療器具にも使われており、体にとって安全な金属であることが証明されています。もちろん厚生労働省でも認可され、すでに40年以上にわたり、インプラント素材として浸透しています。これまでアレルギー症状などはほとんど報告されていません。メンテナンスさえよければ、インプラントそのものは半永久的に機能しうるもので、安心して使っていただける素材といえます。