1日で完了するインプラント治療2

博士以外にも多くの医師や研究者が論文を出していますが、スウェーデンのシュニットマン教授も面白い研究を発表しています。

シュニットマン教授は、下顎総義歯の患者さんの前歯部にインプラントを埋入する手術を行いました。通常は術後4ヶ月間、インプラントを埋入した場所に仮義歯を乗せて、インプラント体が骨とオッセオ・インテグレーションするのを待ちます。

そのまま4ヶ月ほど放置する計画でしたが、これでは4ヶ月間、食事も満足にできずあまりにも忍びない状態です。そこで両側の一番奥の2本と、真ん中の1本と、残っている5本は通常通りインプラント埋入から4ヶ月経って上部構造を作りました。しかし、この3本についてはすぐに仮歯を装填して食べられるようにしました。

すぐに歯を装填したインプラントはダメになるだろうとう思われましたが、この3本の仮歯が、なんと85パーセント使えました。壊れずに、インプラントが生き残ったのです。もっとうまい方法を考えると、3本だけでインプラントができるのではないかというヒントになりました。

これが、即日完成治療の一番基礎になった最初の発見です。

1日で完了するインプラント治療1

人間の欲求はより便利なものを求める傾向があります。

インプラント治療によって自分の歯のように噛めるようになるのは歓迎ですが、治療に時間がかかるのが難点という声があるのも事実です。

「噛めると言ったのに、手術をしてさらに待たされる。何とか早く噛めるようにしてください」
「治療したら、すぐに噛みたいのです。どうにかなりませんか」 という患者さんの要望が非常に多いようです。

インプラントを埋入して、その日のうちに食べさせる研究をまとめた論文は1990年代から報告されています。ブローネマルク博士も、1999年に報告しています。

博士の方法は、上部構造(歯の部分)を先に作っておき、それに合わせてインプラントを埋入するという考え方に基づいて行われた研究です。

これが画期的なところは、上部構造が先で、それに合わせてインプラントを埋入するという逆転の発想だったことと、下の歯16本を支えるのに、わずか3本のインプラント体で保持するという2点です。

抜けたすぐにインプラント体を埋入する1

人生は何が起こるかわかりません。いきなり転倒して歯が折れてしまうこともあります。

このように、歯が抜けたばかりのところに、すぐにインプラント体を埋入する技術もあります。
歯が抜けたあとに、いきなりインプラント体を埋入する場合は、抜けた後の穴の大きさが問題です。

歯の抜けた穴は大きいので、インプラント体を埋入しても隙間ができます。隙間が1.5ミリ以内で、深さが3ミリ以内なら穴の中に何も入れなくても骨ができて埋まってくるといわれています。ところが、それ以上の大きさでは、本人の骨と骨補填剤を入れて骨を作る必要があります。

歯の抜けた穴にインプラント体を埋入し、その周囲に骨と骨補填剤を入れて周囲を埋めます。このままでは骨補填剤が出てきてしまうので、口蓋の内側から結合組織を取ってきて歯肉に定着するまでの仮の蓋をします。

これにより、骨がしっかり再生され、しかも中の骨補填剤が飛び出してくることありません。
もし、この技術を使わないと骨が盛り上がりませんし、インプラント体が安定しません。

歯が抜けたばかりの患者さんには、短時間で治療するのが理想ですので、一日といわず、一時間で仕上げる方法を用います。

抜いた歯の場所にインプラント体を植えて、すぐにアバットメントを連結して、樹脂の仮歯を被せて機能させます。咬合調整が適切であれば、98症例で98.9パーセントの成功率の報告もあります。

美しく仕上げるポイント4

歯肉に適切な盛り上がりを作り、隣の歯肉とマッチした形を作り上げます。上から見ると、インプラントを頂点とした逆三角錘になるように歯肉を形成します。この歯肉の形成を行わないと、歯肉からインプラントの根が飛び出して見えるほど、長くなってしまいます。

また、歯を装填するアバットメントをポーセレンにすることで、根元も自然な白さになり、歯肉の色と艶とふくらみも同じように仕上がります。骨と歯肉のハーモニーは、こうして作り上げるのです。

年を取ってくると、どうしても歯肉が下がるので、歯肉と骨を同時に作ることできれいな仕上がりを目指します。人の歯は色や傾きや出っ張り具合、欠損形態も全部違います。中には歯が割れて歯肉や骨まで炎症を起こして抜歯後大きく骨が欠損する場合があります。

そうしたケースに対しては、骨を補填してメンブレンで覆って移植骨の吸収を抑えながら骨を作ります。歯肉の幅も増えるようにメンブレンで補修します。全体のバランスを見て、歯芽のガムライン、歯肉のラインも全部揃え、歯芽の10.5ミリのラインを揃えて仕上げます。

こういった必要と思われるすべての治療を実施するのが、審美です。補填の理論と骨の再生、歯肉の形成など外科の理論も全部わかっていないとうまく仕上げることができません。偶然できるわけではなくて、狙って、目標をもって治療しているからこそ、美しい仕上がりになるのです。

美しく仕上げるポイント3

現在パピーラ・ビルドアップを作ることができる医師はまだまだ少ないです。というのも、骨を作る技術を持っている医師でなければ、骨との距離を測りながら行う歯肉の歯間乳頭を付けることができないからです。

たとえば、歯周病で歯はあっても骨がないので、インプラントを埋入することになったケースでは、どの位置に何ミリのインプラントを埋入すればいいかを決めてから、骨を盛り上げるために、ヒーリングアバットで骨の高さを上げる目安を決めます。

これは歯肉を切除したところに骨補填剤を入れてメンブレンで覆ってから、歯肉を縫い合わせてカバーする方法です。そうすると、骨ができて歯肉が盛り上がってきます。数か月後に切開してヒーリングアバットを除去しここに仮歯を入れます。

この後がポイントで、あたかも歯肉から歯の根が出てきたような歯肉の形態に見せます。歯肉貫通部のトラディショナルカウンターを作ります。

美しく仕上げるポイント2

自分の歯とインプラント体が並んでいる場合の距離については、1.5ミリ、つまりインプラント同士が隣り合わせになるケースの半分で済みます。歯は自分の骨を守ろうとするので、これくらいあればなんとかなります。

歯と歯の間には歯間乳頭という歯肉が盛り上がって隙間を埋めています。インプラントの場合は、事前に計算して間隔をとらないと、歯と歯の根元に隙間ができてしまうことになります。

歯と歯が接触している場所、コンタクトポイントからインプラント間の骨の位置までの距離が5ミリ以内なら確実に歯肉で埋まりますが、間隔が開けば開くほど歯間乳頭によって埋まる確率は少なくなります。

つまり、歯と歯の間に隙間ができて、黒く見えてしまうことになります。7ミリも開いてしまうと27パーセントしか埋まらないので、見た目が悪くなります。そこで、歯と歯のコンタクトポイントと骨のトップの間を5ミリに作り上げます。これはパピーラ・ビルドアップの理論といわれます。

美しく仕上げるポイント1

審美の基礎になるのは、骨に高さがあること、正しい歯肉の厚みと見た目の美しさです。これに正しい位置にインプラント体を埋入することで完成しますが、この環境を整えることが難しいのです。

特に、上顎の前歯の場合、骨がしっかりしていないと歯肉が陥没することがあります。笑っても歯肉が見えない場合は問題ありませんが、歯肉が見えるケースでは見た目が悪くなります。だからこそ、歯肉と骨の両方を作る必要があるのです。

また、数多くの歯が欠損した場合は、時間が経てば経つほど、歯肉の委縮と骨の吸収が進むので、元に戻すのが難しくなります。そのうえ、歯が5本抜けたといっても、インプラント体を5本埋入すると仕上がりが悪くなります。

特に、隣のインプラントとの距離が短いと骨が吸収されてしまうことがあります。インプラント体とインプラント体が近づけば近づくほど、骨は深く吸収されてしまうことが確認されています。このためインプラント体同士の幅は、最低3ミリ必要であるといわれています。

もし、インプラント体とアバットメントの連結後期の骨吸収1.5ミリメートルが始まったとしても、3ミリの間隔があれば隣の骨には影響が出ません。歯肉の厚みも3ミリなければその差を埋めるために骨が吸収されるということがわかっていますので、3ミリ以上の歯肉厚が必要です。

人目を引く美しい口元を作る3

歯の長さは一番にあたる前歯の長さが平均で10.5ミリといわれます。

前歯が極端に大きい人を除いて、前歯に合わせて歯のラインが連なっています。これらの歯の先端からは10.5ミリ下のところに歯肉が並んでいなければきれいに見えません。加えて、歯肉の深さは骨までに3ミリ程度あることがいい歯の条件といえます。

骨の位置と歯肉の位置と歯の切縁の位置は黄金分割のように理想的に決まっています。それを知った上で、その法則に則った形で作り上げないと美しく仕上がりません。

天然の美しい歯を見ると、歯と歯の間に歯肉が入り込んでパピーラ(歯間乳頭)ができています。歯周病で骨が吸収されてしまっている場合は、歯肉が一直線で歯間乳頭がないことが多いです。これではエステティックとは言えません。

また歯の色が1本だけ変色していたり、インプラント体の一部が飛び出して見えているような場合も美しくないので、これらを総合的にコントロールし、再生することでエステティックを目指す治療を行わなければなりません。

最高の美しさを作り上げるには、ミリ単位に仕上げる細心の技術が欠かせないのです。

人目をひく美しい口元を作る2

歯科治療においては、補綴も重要な要素です。

補綴というのは歯を被せることですが、美しく見せるには補綴の知識や技術、自然で美しい歯を作るラボ(技工室)の腕や理論的裏づけがひじょうに大切です。歯肉に注目すると、ガムラインを揃えることが最大のポイントといえます。

ガムラインとういのは歯と歯肉の境目のラインのことで、ここがきれいで適切なカーブを描き揃っていると、とても美しく見えます。

ガムラインが不揃いだったり、歯肉が不健康な色では見た目がよくありません。歯との境目の歯肉の形は、貝殻のカーブのようなスキャロップの形になっているのが理想的なので、1本1本の歯の歯肉をきれいなカーブを描くように形を整えます。

うまくやらないと歯肉がつれるなどしてとても汚らしく見えます。これに加えて、歯肉のガムラインが歯の切縁ラインとならんでいることが重要です。

歯の切縁のラインをスマイルラインといいます。口を開いたときに、歯の並びが整然と揃っていてスマイルラインと唇とがバランスが取れ、一定の高さで揃っているのが最高の状態なのです。

人目を引く美しい口元を作る1

現代は、すべてにおいてエステティックであることが求められます。

インプラント治療も機能回復だけでなく、見た目を健康的に美しく見せるということが求められるようになっています。

歯科における美しさの基本は何かと言えば、歯と歯肉がバランスよく美しくならんでいることに尽きます。女性だけではない、男性でも誰から見られてもおかしくないようにエステティックに仕上げる必要がありますので、近年エステティック・インプラントの重要性がますます高まってきています。

エステティックに仕上げるには基本がありますが、最大のポイントは、歯肉と骨のハーモニーです。

インプラント体を埋入するところは、骨、つまりハードティシュー(硬い組織)です。その上には歯肉というソフトティシュー(柔らかい組織)があり、当然骨がなければ歯肉も安定しません。その2つをいかにバランスよく仕上げるかが、第一のポイントです。

インプラントを埋入する位置が適切であることも大切で、理想的な場所に埋入されていたほうがより美しく見えます。