高額ともいえる治療費用にみあった効果は得られるのか

入れ歯やブリッジと違って、インプラントは何でも噛めるようになります。この快感や感動は実際に入れてみないことには実感できないものなのですが、インプラント治療の最大の利点は、噛めるようになることなのです。
噛めるようになるメカニズムは単純で、インプラントが骨と完全にくっつくからです。くっつくといっても、生物学的にではなく、物理的にくっつくのです。例えて言うならば、コンクリート壁にネジを打ち込むようなものです。

インプラントにはネジ山があり、さらに素材表面自体もザラザラに加工してありますので、表面積が10倍に増えます。このザラザラになった表面を、ご自身の骨の細胞が成長し取り囲むのです。インプラントはチタンでできているため、アレルギー反応を起こすことがなく、骨の細胞がザラザラのチタンの表面を何の抵抗もなく完全に取り囲むわけです。
そうすると、インプラントは骨の中でガチガチに固定され、ビクとも動かなくなります。
ビクともしないインプラントに被せ物をかぶせるわけですから何でも噛めると自信をもって言えるのです。
ただ、実際には確率は非常に低いのですが、噛みにくいときもあります。それは単にかぶせ物(上部構造)の形が適切でなく、うまく噛み合ってくれない場合です。その場合は、かぶせ物を適切な形に直せばいいだけのことです。
インプラントを入れたとたん、なんでも美味しく味わって食べられるようになります。この感激もまた、一緒に味わっていただきたいものです。

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誘惑的なセールストークで、患者さんを集めるに腐心している歯科医院に限って、実際は薄利多売方式もいいところで、大幅な治療の質の低下に加え、難症例への対応の不備、さらには訴訟を多く抱えているなんてことがザラにあります。また、宣伝広告費もたくさん使っていたりもします。
ひどい歯科医院では、かぶせ物の質を落としてコストダウンを図っています。韓国製のコピーインプラントを大量に仕入れて、スウェーデン製といって治療を行っているところもあります。こうなるともはや、食品偽装に近い印象があります。
最もひどい医院では、低価格で患者さんを集め、集めた患者さんには、何かと医学的な理由を適当に付けて、高いインプラントすすめているところも実際にあります。
どうか安さだけに飛びつかないでください。
安物買いの銭失いという古くからの格言が、インプラント治療にも当てはまります。

インプラント治療は、それなりに費用のかかるものだという認識を持っておいたほうがいいでしょう。
ときには患者さんから、それだけの投資に見合う結果が本当に得られるのかと質問を受けることもあるでしょう。つまり、いざ治療を受けようという患者さんには、費用対効果についての疑問がしばしば浮かんでくるのです。

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信頼できる歯科医院を見分けるには、価格表を公開しているかどうかが目安になるでしょう。この材料を使えば1本あたりいくらで、この方法ならいくらと、あらかじめ決まっているならば、それを堂々と公開できるはずです。
したがって、余計な上乗せ請求される心配がありません。公開されていれば、他の医院と比べられるので適正価格がどうかもわかります。

公開できるということは、なにごともオープンにしている証拠です。信頼できる歯科医院かどうかの大きな判断材料だと思います。
「インプラント1本○万円から」という低価格をうたっている歯科医院は、その実現理由をだいたいこんなふうに言っているようです。
「大量仕入れしています」「宣伝広告費は圧縮しています」「経費削減」「利益幅の圧縮」、
本当でしょうか。そのようなキャッチコピーには、首を傾げざるを得ません。インプラント治療は非常に高度であり、また治療のオプションも多く、患者さんのメンタル面までフォローし、しかも定期健診を通じて一生のおつきあいをしなければいけないような治療です。どう考えてみても、そのような金額で、丁寧かつ精密かつ安全で、患者さんのことをきちんと考えたインプラント治療を行うことに無理があるのではないでしょうか。

インプラント治療を受ける前に必ず歯科医に確認しておきたいこと

とにかく治療に入る前に、必ず次の3点だけは歯科医に確認して、見積もりを出してもらってください。
1.埋め込むインプラントの数と材質について
2.かぶせ物(上部構造)の数と材質について
3.自分のアゴの骨が、インプラント治療をするに十分な状態であるかどうか(もしも不十分な場合、どのような対処方法を取ってくれるのか)

この3点の内容を事前につかんでおけば、他の歯科医院から正確なセカンド・オピニオンを得ることができます。セカンド・オピニオンとは、直訳すれば「第2の意見」となりますが、主治医以外の別の専門家の意見を聞いて参考にすることです。
もしも、これから治療を受けようとしている歯科医院が、ずいぶん安い費用であったり、逆に高すぎると思ったら、必ずセカンド・オピニオンを得るべきです。

そして歯科医院から提示された価格が、インプラント一式となっていたら、注意していただきたいと思います。
インプラント治療は、どんな方法で、どんな材質を使うかが決まれば、おのずと費用も決まってきます。ドンブリ勘定のように、費用を一式で提示するようでは、その金額が妥当であるかどうかもわかりません。ひょっとしたら水増し請求をされていることも考えられます。ですから費用については、歯科医院側のいいなりにならず、妥協もするべきではありません。

手術前後で患者が気をつけることはありますか?

インプラント治療で入院の必要はありません。日帰り手術で、術後に軽いデスクワークなどをすることも十分可能です。ただ、埋入本数が多い場合や骨の移植などを伴う場合は激しい運動や長時間の仕事などは避けて、静かに過ごすことをおすすめします。手術では出血を伴いますから、出血の妨げになるようなお風呂などは控えましょう。

術前には体調管理などを心がけてください。短時間で簡単にできる手術とはいえ、出血を伴いますし、感染の危険もあります。歯科医院ではもちろん滅菌対策を施していますが、ご本人の口腔内の衛生管理も重要です。

手術をスムーズに的確に進めるためには、まず事前に口腔内の衛生状態を整える必要があります。むし歯や歯周病などの治療をすませておきましょう。
アルコールやタバコは術後の治癒に悪影響を及ぼします。毎日お酒を飲まないこと、禁煙することも大切な条件です。特にタバコはニコチンに血管収縮作用があるため血流が阻害されますし、唾液の分泌も悪くなるので傷口の回復が遅れてしまいます。
インプラント治療を受けると決めたら、術前に禁煙して血液の状態を良くし、その後は一生禁煙するくらいの気持ちでいた方がいいでしょう。

通常は術後に仮歯を入れるので、その日のうちから食事はできます。ただし、手術した当日はなるべく軟らかいものを、反対側の歯でかむようにした方が感染のリスクも低くなります。患部に刺激を与えないように、熱いものや刺激物も避けてください。

しかし最近では、当日から硬いものもバリバリ噛めるインプラントが出てきました。専門用語では即時荷重(即時負荷)インプラントというもので、インプラント体を埋入して48時間以内に仮歯、または人工歯が入れられるという方法です。このインプラントが可能なケースは、あごの骨の量が多くしっかりしているなどいくつかの条件を満たす必要があります。

インプラントを埋め込む時間はどれくらいですか?

2回法の場合、一次手術で歯肉を切開して、あごの骨に土台のフィクスチャーを埋め込みます。インプラント1本を埋め込むのにかかる時間は10~20分程度です。1~3本の複数本のインプラントを入れる場合、埋入手術にかかる時間は目安として約1時間と考えてください。いずれにしても長時間に及ぶことはありません。治療が済んだあとは、軽い仕事や家事もできます。

手術の際には局部麻酔行いますから、痛みはほとんど感じません。手術に対する緊張や恐怖感があるという方には、静脈内鎮静法という無痛で受けられる麻酔法があります。これは点滴の要領で静脈に鎮静用の薬剤を注入しますから、うとうとと意識がぼんやりした状態で手術を受けられます。

治療が済むと眠りから覚めたような状態になり、痛みや不安感なども感じることなく、知らないうちに終わります。このような方法で患者さんの精神的な負担にも考慮しますから、緊張しやすい方や神経質な方でも楽に手術を受けることができます。
手術中は麻酔専門医がついて、血圧や脈拍、心電図、呼吸などをモニターで常時、管理しており、安全に受けられます。全身麻酔のように気管にチューブを入れることはありません。

持病があるのですがインプラントはできますか?

外科的処置を伴うインプラント治療では、持病でトラブルを起こさないために、事前診査を行います。特に高血圧や心疾患、糖尿病、肝臓病、腎臓病などの慢性疾患をお持ちの方は注意が必要ですが、継続的な治療を受けており、良好な状態が保たれていればインプラントの手術は行うことができます。

ただし、重度の心臓病や糖尿病等がある場合は主治医の判断を仰がなければならないことがあります。出血時に問題を起こさないためにも、まず主治医に相談することをおすすめします。
病気とは関係がありませんが、妊娠されている方でもインプラント治療には問題ありません。ただ、つわりの時期や安定期に入る前、そして出産と重ならないようにタイミングを考慮する必要があります。できれば出産が済んで落ち着いてからインプラント治療を受けるのがベストです。

18歳以上なら、ほとんどのケースでインプラント治療は受けられます。ただし治療を成功させるためには、手術の際に出血が止まらないなどの原因となる全身疾患をもっていないことが条件となります。健康体が一番ですが、きちんとコントロールできていれば問題ないでしょう。
感染源となるむし歯や歯周病の治療を済ませ、口腔内の衛生が保たれていることも大事です。またインプラントの土台(フィクスチャー)はあごの骨に埋めるので、埋める部分の骨の厚みや高さが最低でも1~1.5センチ以上であることが条件です。骨が薄い方やもろい場合はそのままでは手術ができません。先に増骨術などで骨を増やす処置を施してから、治療を進めることになります。

まったく歯が残っていなくても、インプラント埋入できますか?

まったく歯のない無歯顎の場合でも、インプラントを埋入することは可能です。
この場合、複数のインプラントを埋入し、それを土台にしたブリッジ(ボーン・アンカード・ブリッジ)を装着するという方法があります。
またオーバーデンチャーという方法を使うと、インプラントの本数を極力少なくすることができます。これは4~6本のインプラントによって義歯を支えるものです。ご自身で着脱可能なものと、担当医にしか外せないものがありますが、どちらもあごの骨にしっかりと固定されます。総入れ歯のように外れたり、ゆるんだりして食事や会話で困ることもなく、安心して使用できるタイプです。
インプラントは歯を失っているさまざまなケースに対応できるよう、種類や手術法などが多様にあるので、あきらめる前にぜひ主治医に相談してください。
たとえば前歯や臼歯を1本失っている場合、また複数の歯を失っている場合、上あごか下あごがすべて、あるいは両方のあごすべての歯を失った無歯顎の場合など、状態に応じてインプラントの種類や手術法が選択されます。
難易度の高さは本数にもよりますが、前歯など目立つ部分、そして骨の状態がよくない場合は慎重に治療しなければなりません。骨の量が足りない例はよくみられますが、骨移植や骨補填材などで骨の状態を整えてから治療を進めることができます。

歯周病の治療中でもインプラントは可能でしょうか?

インプラント治療を受けるには、事前に感染源となるむし歯や歯周病を直しておくことが絶対条件となります。特に歯周病は歯周組織に炎症を起こしてあごの骨を溶かしてしまう病気です。放っておくとどんどん骨量が減り、骨がうすくなってインプラント治療に適さなくなります。
そればかりか、歯周病を治さずにインプラントを埋入すると、歯周病とよく似た症状のインプラント周囲炎を起こし、インプラントを早くダメにしてしまいます。そうならないためにも、歯周病はきちんと治すことが大事です。
歯周病の治療は難しくありません。まず歯科医院で奥に入り込んだ歯石を除去してもらい、その後は正しいブラッシングの指導を受けてプラークコントロールをしていきます。自分できちんとコントロールしていけば、ぶよぶよした歯肉でも数週間で健康的に引き締まります。
口腔環境を整えてからであれば、インプラント治療は行えます。歯周病で歯を失ったところにインプラントを埋入したからといって、歯周病になるということはありません。また、インプラント埋入後も、定期検診を継続的に受けて口腔ケアを心がけ、歯周病が再発しないように気をつけましょう。

術前、術後の注意点はありますか?

インプラント外科手術を伴いますから、患者さんは多かれ少なかれ緊張を強いられるものです。できれば手術まではあまり精神力や体力を消耗しないよう、時間に余裕をもっておく方がいいでしょう。もちろん遅刻やキャンセルは避けてください。
手術時には出血もありますし、動きやすいゆったりした服装がおすすめです。また衛生面で女性はなるべく化粧を落として行ってください。食事はきちんと取ったあと、丁寧にブラッシングしてください。
手術の際は全身麻酔でない限り、意識がありますが、無痛処置を施しますから、痛みは感じません。しかし神経質な方、恐がりの方などは手術中に患部に意識を集中してしまい、緊張を高めがちになります。なるべくほかの事を考え、リラックスして臨むことです。
術後は血の巡りが良くなりすぎると、止血の妨げになります。お風呂やお酒、スポーツは避けてください。ただしシャワーぐらいなら大丈夫です。食事は食べやすいものを選ぶとよいでしょう。