治療が終わるまで歯は抜けたままの状態ですか?

インプラントの土台であるフィクスチャー(人工歯根)をあごの骨に埋めたあと、安定するのを待ってからでないと正式な人工歯は入れられませんが、それまではプラスチック製の仮歯を装着することになりますから、見た目の心配はありません。また入れ歯を使用していた場合には、裏打ちした入れ歯を使うことが可能です。
欠損歯が少ない場合は、隣の歯に固定することで当日に仮歯の装着ができます。インプラントの本数が多い場合は、歯が数本連結したブリッジや入れ歯を装着します。仮歯は強度が弱いため、乱暴にすると破損することもあります。通常通りに食事をしてかまいませんが、硬いものや歯に負担がかかるようなものはできるだけ避けた方が良いでしょう。

治療終了後まで何回ほど通院することになりますか?

治療方法によっても異なりますが、一般的なケースとして、検査などで手術前に2~3回通院し、インプラントの埋入手術(一次手術)後、傷口の洗浄などで2~3回、さらに人口歯を取り付けるアバットメント(支台部)の連結(2次手術)、印象採取(歯列の型取り)、人工歯の装着、かみ合わせの調整などで最低でも6~8回の通院が必要です。
さらにむし歯や歯周病があれば、その治療での通院や骨の量が少ない場合には骨造成の治療も加わる場合もあり、それだけ通院回数は増えます。ただ、インプラントを埋入した後、骨と結合してしっかり固定するまでの数ヶ月間は、自分なりに経過観察は必要ですが、問題がなければ通院の必要はありません。

治療期間はどのぐらいかかりますか?

インプラントの治療期間は、手術法によっても異なりますが、インプラント体を埋めたあと骨に結合し、インプラントと一体化するまでの時間を要します。骨と結合する期間は個人差もありますが、下あごで約2~3ヶ月、上あごで約3~6ヶ月ほどかかります。また歯周病やむし歯がある方は、事前にその治療期間が必要となりますし、あごの骨の量が少ない場合には骨を増やす治療をしなければなりません。
そのため治療期間はケースバイケースとなります。目安としては最短で数ヶ月、長い場合は1年以上に及ぶこともあるといえます。
ただ、最近は治療期間を短くする方法がいろいろと考えられています。抜歯即時埋入法や即時荷重インプラントであるオール・オン・4などがそれで、すべての方がこれらの治療を受けられるとは限りませんが、条件さえ満たせば可能となり、治療期間が短縮できます。
インプラントの表面性状に工夫を施すことで、骨と結合しやすいようにするなど素材の工夫によって治療期間の短縮化も図られています。

治療は何歳ぐらいから受けられますか?また高齢者でも可能ですか?

骨格の成長が終わっていることが条件ですので、通常は16~18歳以上であれば、インプラント治療を受けられます。手根骨のレントゲン検査を行うことで、骨の成長状態を確認できます。また高齢の方であっても、健康で骨の状態がよければ、年齢に関係なく受けられます。基本的に年齢の上限はありませんが、あごの骨が薄すぎる場合やもろい方の場合は、骨を増やす処置を行うことでインプラント治療が可能になります。
また最近、インプラントは高価すぎて手が出ないが、義歯がぐらぐらする、噛めないといった悩みを持つ方向けにミニインプラントというものも出てきました。これは通常のインプラントよりも小さい無歯顎用のインプラントで、入れ歯の土台にするタイプです。前歯の部分に4本埋入して、そこに総入れ歯を固定します。
通常の入れ歯より格段に噛む力が増し、手術も簡単でほとんど痛みもありません。歯茎の切開もなく、その日のうちからしっかり噛めます。また入れ歯は取り外して清掃できます。身体への負担も少ないので、体力に自信のない高齢の方にもおすすめです。

インプラントの手術は安全にできますか?

インプラントの手術では痛みを感じなくする局部麻酔を使用します。そして緊張感や恐怖心を感じやすく精神的負担が大きい方には静脈内鎮静法という麻酔を採用します。クリニックによっては鼻マスクで笑気ガスを吸わせて気分を楽にする「笑気吸入鎮静法」を使用するところもあります。
どのクリニックでも麻酔には細心の注意を払っており、局部麻酔は担当医が、その他の静脈内鎮静法などは専門の麻酔医が呼吸や循環器系をしっかり管理して行います。脳波を調べる機械(BISモニター)や、コンピューター制御で薬の量を調整する自動点滴麻酔注入器(TCI)などを導入している医院もあります。

口のなかの手術ですから、患者さんの肉体的、精神的負担は十分考慮されます。インプラント治療が始まってすでに半世紀近くが過ぎている今、手術自体の安全面には高い評価がなされています。あごの骨について精密な検査が行われるようになり、CTによって3次元的に骨の状態を把握することも可能です。これらの検査結果から正確な診断と綿密な治療計画が立てられます。また、コンピューターによって手術のシミュレーションもできるため、手術の精度はより高くなりました。
また特に衛生面でのシステムもしっかり整えられています。麻酔の管理はもちろんですが、院内感染、術後の感染にも配慮します。院内は完全な滅菌対策が施されていますが、もっとも大事なのは術後の患者さん自身の衛生管理です。感染防止の投薬予防、食後と就寝前の消毒、丁寧なブラッシングなどと定期検診がインプラントの寿命に大きく影響します。

あごの骨に金属を埋め込んでも身体に害はないのですか?

インプラントの素材には、金属の中で唯一、生体への親和性(結合しやすい)が高いため拒絶反応も起きず、腐食もしないチタンを使用します。チタンは人工関節や心臓のペースメーカーなど、長期間にわたり体内に埋め込む医療器具にも使われており、体にとって安全な金属であることが証明されています。もちろん厚生労働省でも認可され、すでに40年以上にわたり、インプラント素材として浸透しています。これまでアレルギー症状などはほとんど報告されていません。メンテナンスさえよければ、インプラントそのものは半永久的に機能しうるもので、安心して使っていただける素材といえます。

インプラントのどんな点が入れ歯より優れているか

歯を失うと、一般的にはブリッジや入れ歯、総入れ歯などで補います。しかしブリッジの場合は両側の健康な歯を少し削って土台にする必要があるため、歯に負担がかかり寿命に影響を及ぼすこともあります。
また部分入れ歯や総入れ歯は毎食後、取り外して清掃しないと雑菌の温床になります。異物感も大きく馴染むまで時間かかります。総入れ歯は安定しませんし、硬いものが噛めません。またあごがやせるので入れ歯が合わなくなり、何度も作り直すことになります。
インプラントの場合はこれらの問題を一掃できる大きなメリットがあります。1本の欠損でも全ての歯がないケースでも対応でき、土台をあごの骨にしっかり埋め込みますから、安定感も抜群です。硬いものも気にせずしっかり噛めるので胃腸への負担もなくなり、栄養の摂取もバランスよく行え、健康増進につながります。異物感もなく発音もスムーズにでき、噛む力も天然の歯と変わりません。あごの骨もやせることがなく、いつまでも若々しさを保てます。しっかり噛めることでよい刺激が伝わり、活性化させることにもなります。

失った歯を取り戻す方法

ブリッジで橋渡しをする
抜けた歯が1から2本の場合、もっとも一般的に行われる治療法といえば、ブリッジです。両隣の歯を土台にして、空いたスペースを橋渡しします。歯を削る量を最小限に抑えた接着タイプも登場しています。
ブリッジはその名の通り、橋をかけるように、抜けた歯の両隣を橋げたにして金属を被せ、義歯を抜けた部分に補う方法です。土台となる2本の歯が、かむときにかかる力を抜けた歯の分まで受け止めます。
健康保険が利く、いわば古典的な治療法なので、歯を1、2本失った場合、一番最初に検討される方法でしょう。ブリッジのメリットは、土台となる2本の歯に金属の冠をセメントでしっかり固定するため、つけたあとの違和感がほとんどないことです。かむ力も歯を失う前と同程度に戻せます。また、ブリッジ自体、非常に丈夫で、年月が経ってもほとんど劣化しないので、土台にした歯が虫歯や歯周病になったりしない限り、一度入れれば5年から10年間程度は使用可能です。
一方デメリットは、健康な両隣に冠を被せるために、何でもない歯を削らなくてはいけないことです。一度削られた歯は、虫歯になりやすいなど、どうしても弱くなってしまいます。できるだけ歯を残す治療が主流の今、この欠点を嫌う人は少なくありません。口の中に金属の色が見えることに違和感を感じる人も多いようです。

虫歯や歯周病にかかる危険度も高くなる

歯を抜けたまま放置した場合のもうひとつの問題は、残っている健康な歯まで虫歯や歯周病にかかるリスクが高くなることです。
その理由は、空いたスペースがあると、隣の歯がそちらへと傾いてくるからです。歯はその場に固定されているわけではなく、状況に応じて動きます。
歯はもともと垂直方向からかかる力には強い構造になっていますが、横方向からかかる力にはめっきり弱いのです。傾いた歯でかむと、横からの力が強くかかるので、歯が痛んだり、根に過剰な負担がかかって、ついにはグラグラしてくることもあります。
しかも、傾いた歯の陰になる部分は歯ブラシがうまく届きません。結果、虫歯や歯周病にかかりやすくなるのです。
それでも長期間放っておくと、ドミノ倒しのように歯がどんどん移動してきて、ついには抜けたスペースが埋まってしまうことさえあります。ここまで歯が動くと、かみ合わせが非常に悪くなるだけでなく、顔の形も変わってしまいます。
歯を失ったために、どれだけ生活に支障が出るかは、人によって様々です。実際には、こうした問題が起きてもほとんど気にしない人もいます。しかし、歯を一本失うだけで、健康だったほかの歯にも悪影響が出てしまうのは確かです。口の中の健康を保つためには、やはり抜けたまま放置しないことが第一です。
あなたの口の中には抜けたスペースはありませんか? もしあるなら早めに代わりの歯を入れてもらいましょう。かむ力がよみがえるだけでなく、見た目も良くなって、生活の質がグンと改善されます。

歯はひとまとまりで働いている

大人の歯は、親知らずを除くと、上下それぞれに14本、計28本あります。歯は1本1本が独自に働いているわけではありません。上下それぞれで歯列と呼ばれる一列のまとまりを作り、さらに上の歯列と下の歯列がうまくかみ合うことによって、かむときにかかる力を分散するなど歯の働きを支えています。歯が一本でも失われることは、上下のかみ合わせが壊れてしまうことです。その結果、歯が本来持つ働きである。1.かむ力、2.正しく発音する力、3.食べ物や飲み物を飲み込む力、4.見た目の美しさ、のいずれか、あるいはいくつかに、支障が出てしまいます。
例えば、前歯が一本でもなくなれば、見た目が悪いだけでなく、食べ物をうまくかみ切れなくなります。歯のすき間から空気がもれるようになるので、発音にも影響します。
人前で口を開けて笑えなくなったために、仕事や人づきあいに支障が出てしまう人もいます。もし、2本ある前歯の両方を失ってしまった場合は、顔の形さえ変わってしまいます。一方、奥歯が抜けた場合は、抜けた方の側では食べ物をかみ砕きにくくなってしまいます。その結果かみ砕きやすい抜けていない方の奥歯ばかりを使うことになり、かみ合わせのバランスが崩れてしまいます。
下の奥歯が抜けた場合は、その歯と噛み合っていた上の奥歯が、次第に下の方に出っ張ってきて、歯の根が露出してしまうという問題もあります。
そのほか、食べこぼしをするようになってしまったり、上手に飲み込めない、未消化の食べ物が胃腸に流し込まれて内臓に負担がかかるなどといったトラブルが引き起こされることも考えられます。