インフォームド・コンセントとは
●インフォームド・コンセントとは、医療従事者と患者さまとの間で「正しい情報を伝えた(得られた)上での合意」を意味しています。
たとえば、歯科医師が「インプラント治療が適している/インプラントは適さない」という判断をしたとしても、その治療方針を受け入れるか、受け入れないかの決定権は患者さまのほうにあるのです。
ですから、医療従事者が患者さまを半ば説得して方針に同意させるような行為は、「インフォームド・コンセントが不十分である」ということになります。
大切なのは、「双方の意見の一致・コンセンサス」
患者さまのほうが「全部お任せします」といって、治療内容やメリット・デメリットなどを充分に理解しようとしないことも、不十分なインフォームド・コンセントの例となります。大切なのは、「双方の意見の一致・コンセンサス」なのです。
一方で、患者さまが十分な説明の元で治療方針を「拒否」し、医療従事者がそれを受け入れた場合、これは充分なインフォームド・コンセントが成立していると言えます。つまり、患者の選択権・自由意志を最大限に尊重するという理念に基づいているのです。
患者さまの望む治療と「必要な治療」がイコールとは限りません
患者さまが望む治療に関しては、まずしっかりと、ニーズを伺いますし、方針を押し付けるような治療はいたしません。
ですが、患者さまが「こうしたい。こうして欲しい」と思う治療が、果たして患者さまの口腔内の状況に最適な治療といえるのかどうか-。
その点に関しましては、歯科医として、プロとして、はっきり申し上げさせていただくことも大切なことと考えています。
厳しいことを申し上げざるを得ないケースも
「患者さまの希望に沿った治療を行った場合には、形や色は、ベストな状況にはなりませんが、それでもよろしいですか?」など、厳しいことを申し上げざるを得ないケースもあると思います。それでご納得いただけるのであれば、治療を行うことは可能ですが、「安くて、早くて、どの治療よりもきれいで快適に-」など、現実問題として難しいことは「難しい」、不可能なことは「不可能」と言わざるを得ません。
そういったところをきちんと伝えることなく、「ご希望通りに-」「何でもできますよ」と請け負ってしまうことこそが、後々のトラブルや、患者さまが困ってしまう状況を生み出してしまうのだと、私は考えます。
「本当の意味で患者さまのためになる治療」のために
たとえば、8本のインプラントが必要な状況の患者さまが、「そこまでの費用がない」ということで4本のインプラントを希望され、合意の元で4本の埋入を実施。
しかし、結局は長持ちせず、短期間でやり直しが必要になり、「最初から8本でやっておくべきでしたね」ということになってしまう…そういったケースも少なくありません。
このような場合、経験を積んだ歯科医であれば、「ダメになってしまうこと」は予測の範疇内のはずです。それなのに、「患者さまの希望に沿うこと」を優先するのが、本当に「良い治療、良い歯科医」と言えるでしょうか?
「治療のゴール」に抱くイメージを聞かせてください
私としては、患者さまのご希望に関しては、治療方法云々よりも、
●「長持ちさせたい」
●「見た目をきれいにしたい」
●「しっかり噛めるようになりたい」
といった、「治療を行った結果のゴール」を伺い、決定するのが望ましいのではないかと考えます。
ゴールが決まれば、「手段=治療方法」も決まってきますので、そのなかで「妥協ポイント」を探していくことが必要なのです。安全に、かつ良い治療を行うには、どうしてもそれなりの費用や時間がかかるものだということをご理解いただいた上で、双方が納得でき、さらには「本当の意味で患者さまのためになる治療」をご提供していきたいと思います。